前回の記事で「休職者への上司のリーダーシップとしてはどのようなものが求められるか」といったことを紹介しましたが、では実際に休職期間を減らすことに効果があるリーダーシップとはどのようなものなのでしょうか。
このことについて調べてみるために、Journal of Occupational Rehabilitationに掲載されていた論文を読んでみました。
Schreuder, J. A. H., Groothoff, J. W., Jongsma, D., Van Zweeden, N. F., Van Der Klink, J. J. L., & Roelen, C. A. M. (2013). Leadership effectiveness: a supervisor’s approach to manage return to work. Journal of occupational rehabilitation, 23(3), 428-437.
こちらは2013年にオランダのフローニンゲン大学が行った研究で、オランダの病院職員1,012名を対象として、変革型リーダーシップ能力と職員の休職期間の関係について調べています。
変革型リーダーシップとは、その名の通り、組織の変革を促していくリーダーシップです。
私たちは社会の環境変化が激しい時代に生きていますが、それに対応して組織を先導していくリーダーが求められています。
そこで、この変革型リーダーシップが注目されているわけです。
具体的には、変革型リーダーシップは以下の4つの要素で構成されています(Bass, 1997)。
・カリスマ性
・モチベーションの鼓舞
・知的刺激
・個別の配慮
簡単に言うと、相手の特性を見抜いて、やる気を引き出すスキルということになりましょうか。
・変革型リーダーシップ能力をもつ上司の職場は、職員の長期休職の期間が有意に短縮し、約21,000ユーロの節約につながった
では、休職期間を減らす変革型リーダーシップにはどのようなことが求められるのでしょうか。
これに関しては、休職者の状態に合わせて適切な対応やアドバイスなどを行っていくことが挙げられています。
これに関しては、休職者の状態に合わせて適切な対応やアドバイスなどを行っていくことが挙げられています。
具体的には、この研究では休職者を次の4つのタイプに分けて、それぞれへの適切な対応方法を説明しています。
・熱意はあるが、実力がない新入職員
・徐々に実力をつけてきたが、モチベーションが低下してきた職員
・実力はあるが、モチベーションは様々な職員
・実力とモチベーションがともに高い職員
それぞれへの適切な対応方法としては以下のようになりました。
・熱意はあるが、実力がない新入職員については、まだ経験が少ないので、仕事の進め方について手取り足取り詳しく指示していく
・徐々に実力をつけてきたが、モチベーションが低下してきた職員については、仕事の進め方についてアドバイスするとともに、彼らの仕事に関する感情、意見、提案などを聞く
・実力はあるが、モチベーションは様々な職員については、支持的に接し、彼らの問題解決への意思決定を理解して促す
・実力とモチベーションがともに高い職員については、復職に関する彼らの意思決定と責任を尊重する
状況に応じた対応をするためには、まず本人の状態を適切に理解していることが前提になります。
前回の記事でご紹介しましたが、本人の状態を理解していることは復職時に最も求められる上司の要素でした。
このような要素があると、上司との信頼関係もでき、復職も行いやすくなるのでしょう。
今回の研究結果とあわせて考えるなら、本人のやる気と実力について特に理解していると休職期間の短縮に有効と考えられます。
よろしければ、参考にしてみてください。
参考文献:
Bass, B. M. (1997). From transactional to transformational leadership: Learning to share the vision. Leadership: Understanding the dynamics of power and influence in organizations, 318-333.
参考文献:
Bass, B. M. (1997). From transactional to transformational leadership: Learning to share the vision. Leadership: Understanding the dynamics of power and influence in organizations, 318-333.