2018年12月26日水曜日

変革型リーダーシップと仕事の生産性の関係についてメタ分析したアイオワ大学の研究


以前に「休職期間を減らす上司のリーダーシップのあり方」について記事を書いたとき、変革型リーダーシップが有効だということを紹介しましたが、仕事の生産性との関連はどうなっているのでしょうか。


このことについて調べるために、Group & Organization Managementに掲載されていた論文を読んでみました。
& Organization Management
Wang, G., Oh, I. S., Courtright, S. H., & Colbert, A. E. (2011). Transformational leadership and performance across criteria and levels: A meta-analytic review of 25 years of research. Group & organization management36(2), 223-270.


こちらは2011年のアイオワ大学の研究で、変革型リーダーシップと仕事の生産性の関係について調査した113の先行研究を対象として、相関関係についてメタ分析しています。


変革型リーダーシップとは、相手の立場や価値観を理解して、相手に合わせたやり方で知的好奇心を刺激して、モチベーションを高めていくようなリーダーシップのことをいいます。

例えば、熱意はあるが、実力がまだない新入職員に対しては、業務内容について手取り足取り指導する一方、実力はあるが、熱意が低下してきたベテラン職員に対しては意見を聞き、仕事の進め方について一緒に検討していくというように、相手に合わせて対応を変えていきます。


また、メタ分析とは、関連するテーマの先行研究を集めてきて、定量的に評価する手法のことで、複数の研究をまとめた結果なので、研究の信頼性が高くなります。

定量的に評価する尺度は効果量とよばれ、相関の効果量の目安としては、0.10で「小さい」、0.30で「中程度」、0.50で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。


では、研究の内容に移っていきましょう。

この研究では、具体的に以下の4つのことに着目しています。

・変革型リーダーシップは、職員の生産性を高めるのか

・高めるとしたら、どのような生産性を高めるのか

・職場や組織の生産性にも影響を与えるのか

・交換型リーダーシップと比べると、どうなっているのか


交換型リーダーシップとは、変革型リーダーシップの対極にあるような考え方で、決められた仕事をきちんとやっていれば報酬を与え、やっていなければ指導していくようなリーダーシップのことをいいます。

変革型リーダーシップは相手に合わせて対応を変えるのに対し、交換型リーダーシップは仕事の出来によって対応を変えると考えるとわかりやすいかもしれません。


それでは、結果についてみていきましょう。

さきほどの上の4つの問いに関しては、以下のようなことがわかりました。

・変革型リーダーシップは、職員の生産性と有意な相関がある(相関係数 0.25)

・課題パフォーマンスよりも、文脈的パフォーマンスとの関連が強い(相関係数 0.21 vs 0.30)

・職場や組織の生産性とも有意な相関がある(相関係数 0.33, 0.27)

・交換型リーダーシップと比べると、文脈的パフォーマンスや職場・組織の生産性との相関は大きい一方、課題パフォーマンスとの相関は小さい


文脈的パフォーマンスとは、自分の担当する仕事ではないけれど、職場や組織にとって役立つ活動のことをいいます。

例えば、職場の同僚の仕事を手伝ったり、職場の朝礼にきちんと参加したりすることなどです。


研究結果をみると、変革型リーダーシップは、職員・職場・組織の生産性と有意な相関があり、特に文脈的パフォーマンスとの関連が強く、課題パフォーマンス以外では交換型リーダーシップよりも仕事の生産性が高いということになります。

職場の個人だけではなく、組織ともそれなりに関連があるというのは、なかなかすごいリーダーシップですね。

変革型リーダーシップは、自分の必要最低限の仕事以上のものを発揮することが先行研究でも指摘されており(Podsakoff et al., 1996)、そのようなことを反映した結果なのでしょう。

確かに、知的好奇心を刺激されモチベーションが高まった状態であれば、誰かに何か言われなくても、自分で気づいたことは行動に移しやすいですからね。


これだけ素晴らしい変革型リーダーシップですが、問題となってくるのは習得できるのかどうかということです。

先行研究では、変革型リーダーシップは鍛えられるということが報告されていますが(Barling et al., 1996)、大きな効果を出すためには、高度な技術や経験が必要になってきます。

HUNTER×HUNTERの念能力でいうところの誓約と制約ですね。

長くなったので、変革型リーダーシップの鍛え方については、また今後の記事で紹介していきます。


参考文献:
Barling, J., Weber, T., & Kelloway, E. K. (1996). Effects of transformational leadership training on attitudinal and financial outcomes: A field experiment. Journal of applied psychology81(6), 827.
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.
Podsakoff, P. M., MacKenzie, S. B., & Bommer, W. H. (1996). Transformational leader behaviors and substitutes for leadership as determinants of employee satisfaction, commitment, trust, and organizational citizenship behaviors. Journal of management22(2), 259-298.