仕事の過大な負荷は心身の健康に悪影響を及ぼしますが、将来の健康寿命にはどの程度の影響があるものなのでしょうか。
このことを調べるために、Occupational & Environmental Medicineに掲載されていた論文を読んでみました。
Hanson, L. L. M., Westerlund, H., Chungkham, H. S., Vahtera, J., Rod, N. H., Alexanderson, K., ... & Zins, M. (2018). Job strain and loss of healthy life years between ages 50 and 75 by sex and occupational position: analyses of 64 934 individuals from four prospective cohort studies. Occup Environ Med, oemed-2017.
こちらはストックホルム大学の研究で、フィンランド、フランス、スウェーデン、イギリスの4つの前向きコホート調査の労働者64,934名を対象に、仕事の負荷(ノルマがきつくて裁量権がない)と50~75歳までの主観的健康感と慢性疾患について調べています。
結果としては、
・仕事の負荷があると主観的健康感が良い期間が全体として1.7年短くなる
・男女別では男性で2.0年、女性で1.5年短くなる
・職位別では高い人で1.7年、低い人で2.5年短くなる
・慢性疾患でも関連は弱いが、全体としては同様の傾向はみられた
となりました。
つまり、ノルマがきつくて裁量権のない仕事をしていると将来の健康寿命が短くなる傾向があり、特に男性で職位の低い人がその影響を受けやすいことになります。
この結果は、これから就職や転職を考えている方には役立つのではないでしょうか。
お金のために負荷の大きい仕事を引き受ける方はいますが、自分の健康寿命を犠牲にしてまでやりたいと思うかどうかについては検討しておいたほうがよいでしょう。
健康が損なわれれば働き続けることも難しくなるわけですから、長期的な視点で仕事を選んでいってほしいと思うところです。