メンタルヘルスに関連した問題でお困りの職場も多いと思いますが、そのような状況に対処するための質の高いガイドラインは存在するのでしょうか。
このことについて調べるために、Scandinavian Journal of Work, Environment & Healthに掲載されていた論文を読んでみました。
Nexø, M. A., Kristensen, J. V., Grønvad, M. T., Kristiansen, J., & Poulsen, O. M. (2018). Content and quality of workplace guidelines developed to prevent mental health problems: results from a systematic review. Scandinavian journal of work, environment & health.
こちらはデンマークの研究で、今までに公開された職場のメンタルヘルス対策のガイドラインについて系統的レビューを行っています。
対象となったガイドラインは、
・1次予防(病気を未然に防ぐなど)
・2次予防(早期発見・早期治療など)
・3次予防(再発防止・職場復帰支援など)
のいずれかを含むものでした。
これらに対して、AGREE Ⅱという評価ツールを用いてガイドラインの質を評価しています。
AGREE Ⅱは、
①適用範囲
②関係者の関与
③発展性
④内容の明確さ
⑤応用性
⑥編集者の独立性
で構成されます。
今回の研究では①~③で65%以上のスコアを獲得したものを質が高いと評価しています。
結果がどうだったかというと、17のガイドラインが評価対象となり、4つのガイドラインが質が高いと評価されました。
ただ、そのうちの2つのガイドラインで用いられているエビデンスは、その後の研究で否定されており、活用できなくなっています。
そのため、実際に活用できる質の高いガイドラインは以下の2つになりました。
これらのガイドラインはどちらもイギリスで作成され、1次予防について扱っています。
主な内容としては、雇用者がリスクマネジメントを行ったり、メンタルヘルスに関する啓発を行ったりすることや管理者がコミュニケーションや人間関係を改善していくことが推奨されています。
主な内容としては、雇用者がリスクマネジメントを行ったり、メンタルヘルスに関する啓発を行ったりすることや管理者がコミュニケーションや人間関係を改善していくことが推奨されています。
つまり、組織をマネジメントする立場の人々が職場のメンタルヘルスに関して問題意識を持ち、職員と接していくことが1次予防には大事ということになります。
言っているのは当たり前のことですが、これがエビデンスに基づいた質の高いガイドラインで示されているということは、職場のメンタルヘルスの改善活動を進めていくときに説得力のある説明ができるのではないでしょうか。
例えば、ただ単に「コミュニケーションが大事」と声高らかに伝えるよりも、「Scandinavian Journalのシステマティックレビューで質が高いと評価されたイギリスのNIHのガイドラインによると、職場の管理者が従業員とのコミュニケーションを増やしていくことが、メンタルヘルスの1次予防対策として推奨されています」と伝えたほうが遥かに説得力がありますよね(ここまで言うとやりすぎかもしれませんが)。
それにしても、エビデンスに基づいた質の高いガイドラインは少ないですね。2次予防、3次予防に関しては基準を満たすものはありませんでした。
今後、このあたりについてエビデンスをまとめたガイドラインが出ると、インパクトがありそうです。
特に、2次予防はガイドラインの検索の段階でも見つからなかったので、メンタル不調の早期発見・早期治療につながるようなツールを開発できると非常に役立つのではないでしょうか。
おそらく、このあたりの問題については医療だけでは解決することは難しく、IT技術などの他業種との連携が必要と考えられます。
個人的にはとても興味のある分野なので、今後何か協力できる機会があれば積極的に関わっていきたいです。
個人的にはとても興味のある分野なので、今後何か協力できる機会があれば積極的に関わっていきたいです。