普段の仕事のなかで健康に関連したアドバイスを行う機会が多いのですが、積極的にアドバイスを聞いてくれる方もいれば、残念ながら反応がイマイチな方もいらっしゃいます。このようなアドバイスの受け入れの違いはどのような要素の影響を受けるのでしょうか。
この点について調べるために、Southern Communication Journalに掲載されていた論文を読んでみました。
Feng, B., & MacGeorge, E. L. (2006). Predicting receptiveness to advice: Characteristics of the problem, the advice-giver, and the recipient. Southern Communication Journal, 71(1), 67-85.
こちらはアメリカのパデュー大学の研究で、280名の大学生を対象に、最近受けた個人的な問題に関するアドバイスについてアンケート調査が行われています。
質問内容としては、
•アドバイスをくれた人の特徴(専門性、関係の親密さ、過去に影響を受けた行動の有無)
•アドバイスを受けた問題の特徴(深刻さ、責任の有無)
•本人の特徴(性別、話好き、自立性)
•アドバイスの受け入れ度
が調査されました。
そして、アドバイスの受け入れ度と各調査項目との関連を調べるために、相関分析と回帰分析が行われています。
結果としては、
•関係の親密さ(r = 0.34)
•専門性(r = 0.28)
•話好き(r = 0.24)
•女性であること(r = 0.18)
•過去に影響を受けた行動があること(r = 0.16)
で有意な相関がみられました。
また、関係の親密さ、専門性、話好きは回帰分析でも有意な関連が認められています。
つまり、過去に行ったアドバイスが効果的で、信頼関係がしっかり築かれた専門家が、話好きな女性にアドバイスを行うときは受け入れが最も良いということになります。
確かに、今までの経験のなかでも、そのような場面ではアドバイスの受け入れが良かったように感じます。
ただ、問題の特徴や本人の自立性がアドバイスの受け入れに関連しなかったことは意外でした。
実生活で応用するとしたら、アドバイスはある程度相手との関係性が構築された後で行うのが効果的でしょう。
赤の他人からのアドバイスだと、なかなか聞き入れにくいですからね。
また、過去にうまくいったアドバイスがあれば、そのときのことを持ち出して、過去に影響を受けた行動を思い出させるという方法も良いかもしれません。
ただし、この研究は自記式質問紙を用いた横断研究なので、思い出しバイアスが含まれていたり、因果関係が不明であったりします。
そのため、「アドバイスを受け入れたから専門性を高く感じた」というようなこともあり得ますので、この点には結果の解釈に注意が必要です。