2018年6月20日水曜日

研究者として成功するためには努力や好奇心だけでなく周囲をうまく使う力が必要だというサウサンプトン大学の研究


私の所属している研究室のプロジェクトを通して、様々な研究者の方とお会いする機会があり、そのなかにはノーベル賞候補とも言われている方もいるのですが、そのような卓越した研究者はどのような特性を持っているのでしょうか。

このことについて調べるために、Journal of Vocational Behaviorに掲載されていた論文を読んでみました。

Beigi, M., Shirmohammadi, M., & Arthur, M. (2018). Intelligent career success: The case of distinguished academics. Journal of Vocational Behavior.

こちらはサウサンプトン大学の研究で、28名の卓越した研究者を対象として半構造化面接を行い、彼らの原動力、働き方、人間関係について調査しています。

ここでいう卓越した研究者とは、アメリカの大学に所属していて、各研究分野において世界で上位2-5%の業績を出している人を選定しています。


それでは、順番にどんどん結果をみていきましょう。

まず、原動力についてですが、3つのタイプに分かれます。1つ目は本質的な興味です。「毎週木曜にWeb of Scienceに新しく追加された論文をチェックするのが楽しくて仕方ない」といったタイプです。

2つ目はアイデンティティです。自分自身が研究者や指導者の立場であることを強く意識し、期待される以上に仕事に力を入れるタイプです。

3つ目は偶然の結果です。「自分の住んでる近くの大学に入学したら、物理の講義が面白くて研究室に入り、そこで出会った人々の影響を受けて研究を続けている」といったタイプです。


次に、働き方についてですが、5つに分かれます。1つ目はブルーオーシャン戦略です。まだ誰も研究していない分野を開拓していくということです。

2つ目はハードワークです。研究に長い時間を費やしたり、週末も研究室にこもって作業するようなことです。

3つ目は知識のアップデートです。科学情報は日々更新されていくので、一度仕入れた知識で満足せず、常に新しい情報を収集していくということです。

4つ目は優先順位です。私たちに与えられた時間には限りがあるので、些末な問題には時間をかけず、本当に必要なことに時間をかけるということです。

5つ目は集中する時間を作ることです。研究者として評価されるためには、論文を執筆しないといけません。それに費やせる時間を確保するということです。


最後に、人間関係についてです。こちらは3つに分かれます。1つ目は院生の指導です。卓越した研究者は、院生を指導しながら一緒に研究に携わることで、自分一人では成し遂げられなかった業績を出していきます。

2つ目は国内外とのネットワークです。学会などを通じて他の研究者と交流してネットワークを築くことで共同研究を進めていったりします。

3つ目は家族です。多くの卓越した研究者は家族から様々なサポートを受けており、研究に集中できるように配慮されています。


以上をまとめると、卓越した研究者は自分の研究分野に一点集中して、そこに時間と労力を全力で注ぎ込む一方で、自分だけの力に頼らず、周囲の資源をうまく活用しているということになります。

個人的には、周囲の人々と協力して大きな成果を出していくところが、アダム・グラントさんが「GIVE & TAKE」で紹介しているGIVER(与える人)に近いと思いました。

自分の利益だけでなく、周囲の利益も考えて行動できることが研究者としての成功の秘訣かもしれません。

研究者の方やこれから研究者を目指す方は参考にしてください。