メンバーシップ型の日本企業の人材採用では、伸びしろのある人を選びたいという側面もあるかと思いますが、将来出世しやすい人にはどのような傾向があるのでしょうか。
文献
このことについて調べるために、Journal of Vocational Behaviorに掲載されていた論文を読んでみました。
Apers, C., Lang, J. W., & Derous, E. (2018). Who earns more? Explicit traits, implicit motives and income growth trajectories. Journal of Vocational Behavior.
こちらは2018年のベルギーのゲント大学の論文で、311名の被験者を4年間にわたって観察し、被験者の傾向と収入の関係について調べています。
評価方法
被験者の傾向としては、ビックファイブと呼ばれる5つの性格と、ビックスリーと呼ばれる行動の原動力となる3つの動機に関する調査が用いられました。
具体的には以下の通りです。
性格
・外向性
・情緒安定性
・開放性(知的好奇心、想像力など)
・協調性
・勤勉性
動機(行動の原動力)
・周囲との友好関係
・独自の成果
・他者への影響力
この研究では、性格で外在的な傾向、動機で内在的な傾向を調べようとしているようです。
結果
そして、これらの被験者の傾向と収入の関係としては以下のようなことがわかりました。
・調査開始時点で、情緒安定性と開放性が高い被験者は収入が高い
・情緒安定性と勤勉性が高く、周囲との友好関係を求める傾向が低い被験者は、収入の伸びが大きい
考察
やはりメンタルの安定は、出世するためには重要な要素のようです。
メンタルが改善して、出世しやすい人が多くなれば、企業の生産性の向上にもつながるわけですから、産業保健活動にも力を入れていきたいですね。
開放性も調査開始時点の収入の高さと関連していましたが、開放性が高いと知的好奇心が高いということですから、教育水準も高くなって、高収入な仕事に就きやすいのでしょう。
勤勉性が高いと収入の伸びが大きくなるのはわかりやすいですが、周囲との友好関係を求める傾向の低さも収入の伸びと関連していたことは意外に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
周囲との友好関係が行動の原動力となっているということは、周囲の状況に流されやすいということでもあります。
自分のお金や時間を犠牲してまで他人に貢献する行動が増えるため、自分のやりたいことができず、出世街道からは外れやすくなってしまうのです。
周囲との友好関係を築くことも大事ですが、それが本質的な目的となってしまうと、弊害も出てくるということには気をつけていきたいところです。
また、需要と供給のバランスで考えると、他の人と同じようなことをしているということは、供給の多いことをしているということですから、そこに高い価値を見出すのは難しくなります。
収入を高めるためには、需要が高くて、供給が少ないものを目指して、他の人にはできない仕事をやっていく必要があります。
そういう意味でもやはり、周囲との友好関係を求める傾向が低いことは大事なのでしょうね。
私ももっと頑張らねば。