2019年2月13日水曜日

行動を変えるのに「自分へのご褒美」は有効なのかメタ分析したマンチェスター大学の研究


何か頑張ったときに自分にご褒美を与える方も多いかと思いますが、行動を変えるために自分へのご褒美を設定することは効果があるのでしょうか。


文献


このことについて調べるために、Behavior Therapyに掲載されていた論文を読んでみました。

Brown, E. M., Smith, D. M., Epton, T., & Armitage, C. J. (2018). Do self-incentives and self-rewards change behavior? A systematic review and meta-analysis. Behavior therapy49(1), 113-123.



こちらは2018年のマンチェスター大学の論文で、自分へのご褒美が行動変容に与える効果について調査した7つの先行研究(被験者1,161名)をメタ分析しています。


メタ分析とは、関連するテーマの先行研究を集めてきて、定量的に評価する手法のことで、複数の研究をまとめた結果なので、信頼性が高くなります。


メタ分析で定量的に評価される数値のことを効果量といいますが、今回用いられている標準化平均差の効果量の目安としては、0.3で「小さい」、0.5で「中くらいの」、0.8で「大きい」効果があるとされています(Cohen, 1988)。




結果


それでは今回のメタ分析で、自分へのご褒美が行動変容に与える効果はどうなったかというと、


・効果量は0.17 (95%CI 0.06 to 0.29)


となりました。



解釈



うーん、どうも自分へのご褒美が行動変容に与える効果は小さいようです。


論文の著者は、「自分へのご褒美は巷でよく使われているほど効果はない」と指摘しており、確かにその通りかもしれません。



ただ、自分の行動を変えていくことは、かなり大変な作業でもあります。


重度の糖尿病やアルコール依存症の人が、入院して生活習慣を変えていかないといけないように、人間の行動を変えていくのはとても難しいのです。



それを考えると個人的には、自分へのご褒美は効果は小さいですが、有効な手段であるため、行動を変えるために取り入れられるものは貪欲に取り入れていったほうがよいのではないかと思いました。



参考文献:
Cohen, J. (1988). Statistical power analysis for the behavioral sciences 2nd edn.