「人は苦難を乗り越えて成長する」などと一般的に言われますが、では逆に、成長するためには苦難は必要なのでしょうか。
文献
このことについて調べるために、Psychological Bulletinに掲載されていた論文を読んでみました。Mangelsdorf, J., Eid, M., & Luhmann, M. (2018). Does growth require suffering? A systematic review and meta-analysis on genuine posttraumatic and postecstatic growth. Psychological bulletin.
こちらは2018年のベルリン自由大学の論文で、ライフイベントとその後の心理的変化について調査した122の先行研究(対象者98,436名)をメタ分析しています。
メタ分析とは、関連するテーマの先行研究を集めてきて、定量的に評価する手法のことで、複数の研究をまとめた結果のため、信頼性が高くなります。
結論
今回は、先に結論から言ってしまうと、・ネガティブなライフイベントが、ポジティブなライフイベントよりも、心理的に大きく成長させる効果はみられなかった
となりました。
つまり、「成長するために、わざわざ苦難を経験しなくてもいいよね」ということです。
どういうことなのか具体的にみていきましょう。
方法
この研究では以下のように、ライフイベントを「ポジティブなもの」、「ネガティブなもの」、「どちらともいえないもの」に分けて、心理的変化への影響をみています。
ポジティブなもの
・恋愛
・親友との出会い
・宝くじに当たる
など
ネガティブなもの
・死別
・虐待
・戦争
など
どちらともいえないもの
・子供が実家を離れる
・トラウマ体験の開示
・退職
など
そして、心理的変化としては以下のようなものが調べられました。
・社会的人間関係
・人生の意味
・スピリチュアリティ
・場のコントロール感
・自尊心
結果
では、これらのライフイベントによって、どのような心理的変化が起きたかというと、・自尊心、社会的人間関係、場のコントロール感は、どのライフイベント後でも上昇した
・逆に、人生の意味、スピリチュアリティは、どのライフイベント後でも有意な上昇はみられなかった
となりました。
解釈
つまり、ポジティブなライフイベントでも、ネガティブなライフイベントでも、成長するものは成長するし、成長しないものは成長しないということです。
この論文の著者はこの結果を受けて、「人々は、自身の経験したライフイベントの性質に関係なく、心理的に成長していく傾向がある」と指摘しています。
そう考えると、確かに「苦難を乗り越えて人は成長する」こともできますが、心理的に成長するためにわざわざ苦難を経験するメリットはなさそうですね。
ということは、ベジータがスーパーサイヤ人2になるために、バビディに洗脳されたのは、あまり良い選択ではなかったということか笑