2019年2月23日土曜日

夜勤では労災リスクが27.9%増えるというパリ第5大学の研究


週49時間以上働いていると、脳卒中のリスクが有意に高まるということが報告されていますが(Kivimaki et al., 2015)、労働時間は労災の発生にどの程度影響を及ぼすのでしょうか。



文献


このことについて調べるために、American Journal of Industrial Medicineに掲載されていた論文を読んでみました。

Folkard, S., & Lombardi, D. A. (2006). Modeling the impact of the components of long work hours on injuries and “accidents”. American journal of industrial medicine49(11), 953-963.


こちらは2006年のパリ第5大学の論文で、労働時間と労災発生の関係について調査した先行研究をレビューしています。


どのような項目について調査されたか


具体的には、以下のようなことについてレビューを行っています。


・シフト勤務による労災発生リスクは?

・夜勤の連続による労災発生リスクは?

・日勤の連続による労災発生リスクは?

・長時間労働による労災発生リスクは?

・休憩による効果はどのくらいあるの?



つまり、シフト勤務、長時間労働、休憩が労災に与える影響について調べられているということになります。



労災発生に与える影響はどのくらいか

ではさっそく、結果についてみていきましょう。


・労災発生リスクは、日勤と比較して、夕方勤務で15.2%、夜勤で27.9%上昇

・夜勤の連続では、2日目で6%、3日目で17%、4日目で36%上昇

・日勤の連続では、2日目で2%、3日目で7%、4日目で17%上昇

・長時間労働では、8時間勤務と比較して、10時間では13.0%、12時間では27.5%上昇

・2時間ごとに休憩を入れた場合、休憩前最後の30分は、休憩直後最初の30分と比較して、労災発生リスクは2倍以上



夜勤、長時間労働、連続勤務では、やはり労災発生リスクは上昇していますね。


このような労働環境では、睡眠が十分に確保できなかったり、疲労がたまりやすかったり、生活リズムが乱れたりしやすくなるため、注意力が低下してしまうことが報告されています(Caldwell et al., 2018)。


今回の研究で、休憩からの経過時間で労災発生リスクが変わってきているように、リカバリー時間をしっかり確保して、注意力を維持していく取り組みは重要となるでしょう。



労災を減らすことは現業系の職場で大きな課題となっているため、産業医先として訪問したときには、労働時間の管理についてアドバイスしていきたいです。



参考文献:
Caldwell, J. A., Caldwell, J. L., Thompson, L. A., & Lieberman, H. R. (2018). Fatigue and its management in the workplace. Neuroscience & Biobehavioral Reviews.
Kivimäki, M., Jokela, M., Nyberg, S. T., Singh-Manoux, A., Fransson, E. I., Alfredsson, L., ... & Clays, E. (2015). Long working hours and risk of coronary heart disease and stroke: a systematic review and meta-analysis of published and unpublished data for 603 838 individuals. The Lancet386(10005), 1739-1746.