医者のメンタルヘルスでよく注目されるものとして、バーンアウトがある。
このブログでも以前に「バーンアウトが起きやすい診療科」といった記事を投稿してきた。
バーンアウトとは、仕事に対する熱意ややりがいを失って、燃え尽きてしまった状態のことである。
熱意ややりがいを失った仕事ほど続けることが難しいものは少ないだろう。
私も研修医時代にあまり興味が持てなかった診療科をローテーションしたときは、雲の中の一点の光を見つけるが如く、自分にとってやる気の源となるものを見出して何とか凌いだものである。
医者のバーンアウトは医療の質にもつながってくるため、対策が求められるところであるが、このバーンアウトの要因は内的なストレス耐性が大きいのか、それとも外的な職場環境が大きいのだろうか。
このことに関して参考になるのが、2020年のメイヨークリニックの研究である(West et al., 2020)。
こちらの研究では、5,445名の医師を対象としてレジリエンスとバーンアウトについて質問紙調査を行い、一般労働者との違いを比較している。
レジリエンスとは、ストレスがかかったときの復元力のことであり、一般的にストレス対処力の指標とみなされている。
ここではレジリエンスを0-8点で評価し、点数が高いほどストレス対処力が高いことを表している。
そして、ここで分かったのが以下のようなことである。
・医師は一般労働者と比較して有意にレジリエンスが高い(6.49 vs 6.25, p < 0.001)
・しかし、レジリエンスが最も高かった医師たち(8点満点)でも、29%がバーンアウトの症状を示していた
つまり、医師はレジリエンスが高いけれども、バーンアウトが多いということになる。
この結果を見ると、どうやら医師のバーンアウトは、内的なストレス耐性よりも外的な職場環境要因の影響が大きいということがわかる。
確かに、職場で求められる高度なスキルに基づいた仕事のプレッシャー、膨大な仕事量や当直・オンコールなどによる長時間労働、逃げ出すことのできない狭い職場の人間関係など医師の労働環境はありとあらゆるストレスの宝庫である。
そのおかげで私はどんなストレスが辛いのか身をもって体験することができ、今の仕事に生かされていると言っても過言ではない。
ただ、私のように前向きに捉えられるケースは稀であるため、今後の職場環境要因側からのバーンアウト対策が待ち望まれるところである。