超過死亡という言葉をご存知だろうか。
簡単に言うと、例年と比べて上回った死亡者数のことを意味する。
これは、伝染病・災害・戦争など生死に関わる突発的なイベントが発生したときに、その被害状況を大まかに把握する上で役に立つ。
新型コロナの場合で考えてみると、検査や調査によって感染者数や死亡者数が発表されているが、本当はコロナに感染して死亡したのに原因が特定できなかったケースに関しては当然数字として現れてこない。
このようなときに超過死亡を見れば、調査でわからなかったケースも含めて、新型コロナで亡くなった方々の全体像が見えてくるというわけだ。
なかなか興味深い指標ではないだろうか。
実際のところ、新型コロナ後の超過死亡ってどんなもんなのだろうかと思っていたら、良い文献を見つけた。
参考になったのは、2020年のJAMAに掲載されたイェール大学の研究である(Weinberger et al., 2020)。
こちらの研究では、2020年3月1日から5月30日までのアメリカの超過死亡を調べている。
コロナ流行期に前年までのベースラインと比べてどのくらい死亡者数が増えたのかチェックしているというわけだ。
そして、その結果がこちら。
・調査期間中に780,975名の死亡が確認され、超過死亡は122,300名であった
・この期間に公表されたコロナ死亡者数は95,235名であり、超過死亡のほうが28%多かった
アメリカでは3-5月で10万人近くがコロナで亡くなっているが、実際にはさらに3万人弱がコロナで亡くなっている可能性があるということになる。
隠れコロナの存在が浮き彫りとなる結果だろう。
ちなみに、日本では2020年7月3日時点でも感染者数19,068名、死亡者数976名であることを考えると、アメリカのコロナ事情は日本と比較にならないほど深刻であることもわかる。
そんな中でマスクも付けずにデモで密集して大声を上げている人がいるのだから驚きを隠せない。むしろ、その結果が今の感染状況を表しているのかもしれないが。国民性も感染予防に重要な役割を果たしているのだろう。
さてさてさて、ここまでくると気になってくるのが日本の超過死亡である。
残念ながら、日本の研究は見つからなかったが、大まかに把握する方法はある。
参考になるのは、厚生労働省の人口動態統計速報である。
ここには、各月の死亡者数が記載されているのだ。
これを調べてみると、2020年4月の日本の全死亡者数が113,362名であるのに対して、前年同月の2019年4月は112,939名である。
これは、
・2020年4月の日本の全死亡者数は、前年同月と比べて423名(0.4%)多かった
ということになる。
つまり、全然増えていない。
日本はあまり検査をしていないから、コロナの正確な実態を追えていないのではないかという指摘も聞かれたが、少なくとも死亡者数に関してはほとんどコロナの影響を受けていない。
2020年6月に厚生労働省が実施した抗体検査でも、東京都での陽性率が0.1%となっており、日本ではまだまだコロナ感染が広がっていないことが窺える。
国によってこんなに感染状況に差が見られるのは興味深いところである。
この差が一体何によるものなのか。
それを調べた研究にも今後注目していきたいところだ。