2020年1月2日木曜日

やめられない止まらない!?そんなサンクコストに効く対処法が見つかった件


先日、神田松之丞の独演会に行ってきた。



チケットが取れない人気講談師という評判の通り、自分の世界に観客を引き込む話芸が素晴らしく、行ってみて良かったと思ったのだが、その席で鼠小僧次郎吉の「汐留のしじみ売り」という話をしていた。



詳しい話はぜひ聞いてみて確認していただきたいのだが、この話のなかで博打で金を失ってしまった男が出てくる。



この男は、借金をしてまで自分の損失を取り戻そうとしたのだが、それも裏目に出てさらに借金が嵩んでしまう。



私はそのとき、松之丞の講談に聞き入りながら思った。



これは、サンクコスト効果だと。






サンクコスト効果とは、自分の金・努力・時間などを投資したものに執着して非合理的な判断をしてしまうことである。



先ほどの「汐留のしじみ売り」に出てきた男は、自分の元金がなくなった時点で博打を止めておけばよかったものの、借金までしたせいで取り返しのつかない事態に陥ってしまったのだ。



ここから先はネタバレになるので伏せておくが、現実世界でもクレーンゲームで好きなものが取れるまで止められなかったりすることなどはよくあるだろう。



実際に、サンクコストが経済的な意思決定に与える影響に関してメタ分析した研究(Roth et al., 2015)によると、中程度の効果があったと報告されている(Cohen's d = 0.50, 95%CI 0.36-0.63)。






では、このようなサンクコストに対して、我々はどのように対処していけば良いのか。



参考になるのは、2013年のペンシルベニア大学の研究である(Hafenbrack et al., 2013)。



こちらの研究では、マインドフルネス(瞑想)がサンクコストの抵抗資源になるのではないかということについて検証するために4つの実験を行っている。



①78名の成人被験者を対象にマインドフルネスとサンクコストへの抵抗の相関関係についてWeb調査


②57名の大学生を2つのグループに分け、一方はマインドフルネス、もう一方はマインドワンダリング(ぼーっとすること)して15分間過ごしてもらい、サンクコストを測る課題に取り組んでもらう。


③109名の大学生を対象として、②と手順でサンクコストを測る課題に取り組んでもらう。ただし、課題の内容は②と異なる。


④156名の被験者を対象に、マインドフルネス、サンクコスト、過去・未来への意識、ネガティブな感情に関してWeb調査






ちなみに、②、③のサンクコストを測る課題は、シナリオ形式になっている。



例えば②では、



「あなたは印刷会社のオーナーです。20万ドルで新しい印刷機を買いましたが、翌週にライバル会社が倒産して、より性能の良い印刷機を1万ドルで買わないかと打診がありました。その印刷機はコストを50%カットして、50%早く仕上げることができます。20万ドルの印刷機を売ることはできませんが、1万ドルは出費できる余裕があります。あなたは、1万ドルの印刷機を買いますか?」



といったことが課されている。



この場合、20万ドルの印刷機に固執して、性能の良い1万ドルの印刷機を買わなかったら、サンクコストがあるとみなされる。






さて、結果がどうなったかというと、



①マインドフルネスとサンクコストへの抵抗には有意な相関があった(r = 0.21)


②マインドフルネス・グループは、マインドワンダリング・グループよりも、有意にサンクコストに抵抗した(78% vs 44%)


③マインドフルネス・グループは、マインドワンダリング・グループよりも、有意にサンクコストに抵抗した(53% vs 29%)


④マインドフルネスとサンクコストへの抵抗との関係は、過去・未来への意識とネガティブな感情が仲介していた



ということがわかった。






つまり、マインドフルネスは、サンクコストへの抵抗資源となっており、そのメカニズムとしては、過去・未来への意識やネガティブな感情を改善することが挙げられるのだ。



マインドフルネスの本質は、「今ここ」に集中することなので、結果的に過去・未来への意識が改善されるのだろう。



それにしても、たった1回15分のマインドフルネスでここまでサンクコストへの抵抗が現れるとは思わなかった。



お金などの投資で失敗したくない方は、ぜひマインドフルネスを日常生活に取り入れたほうが良いだろう。



マインドフルネスを実践してみたい方は、ぜひ過去の記事を参考にしていただきたい。