2020年1月1日水曜日

幸せになりたいなら幸せになろうとしてはいけない!?快楽順応に我々はどう立ち向かうべきか


幸福感にはセットポイントがあるという話を耳にしたことはあるだろうか。




いくら幸せな気分になっても、いずれ元の状態に戻ってしまうというものである。



これは、快楽順応と呼ばれる現象である。



英語では、"hedonic treadmill"(快楽のウォーキングマシン)と表現される。



なかなかのネーミングセンスではないか。






と感心している場合ではない。



これまでの研究でも快楽順応を支持するような結果が出ており、



・幸福感の半分は、遺伝で決まる


・結婚のようなポジティブなイベントを経験しても、数年後には幸福感は薄れる


・宝くじに当たっても、感情は時間とともに元のベースラインに戻る



といったことがわかっている(Sheldon et al., 2013)。






「これではこの先どんなに良いことがあっても幸せになれないじゃないか!」と憤慨された方もいらっしゃるかもしれない。



しかし、諦めるのはまだ早い。



幸福感を高め、それを維持する方法についても研究されているのだ(Sheldon et al., 2013)。



まず、幸福感を高める方法としては以下のようなものが挙げられている。



・個人的な目標を追い求める


・新しい自分のライフワークに取り組む


・感謝の気持ちを表現する


・他人に親切にする


・自分の強みを生かして働く






2009年のカリフォルニア大学のメタ分析(Sin & Lyubomirsky, 2009)によると、このようなポジティブな介入は、幸福感と中程度の効果があることが報告されている(r = 0.29, 95%CI 0.21-0.37)。



どうやら、幸福感はセット「ポイント」ではなく、セット「レンジ」のなかで変動することができそうなのである。



そのため、戦略としては、幸福感をこのセットレンジの上限まで高めることが目標となる。



そこで鍵となるのが、「変化」である。



どういうことなのか説明していこう。





参考になるのは、2013年のミズーリ大学の研究である(Sheldon et al., 2013)。



こちらの研究では、52名の大学生を対象として、自分にできそうな他人への親切な行動に10週間取り組んでもらったのだが、



・一方は、毎回同じ親切な行動


・もう一方は、毎回異なる親切な行動



を行うように指示された。






そして、10週間後に幸福感の変化を測定すると、次のような結果になった。



・毎回異なる親切な行動をした被験者は、幸福感がアップ


・毎回同じ親切な行動をした被験者は、幸福感がダウン


・2つのグループでは幸福感に有意な差がみられた



他人への親切は幸福感を高めやすい行動だが、ずっと同じことを繰り返すように指示されると、逆に幸福感は下がってしまうようである。



ずっと同じことをしていると、他者貢献の意識が薄れて、やらされ感が強くなってしまうのであろう。






この研究からわかることは、自分なりに創意工夫して毎回アレンジを加えながら行動していくことが幸福感を高める上で重要になるということだ。



何か良い行いをするときは、今までとは何か違った新しい変化を取り入れるように心がけていきたい。