2020年1月9日木曜日

バーンアウトは、情熱が大きすぎるから起きるのではない。その質によって起きるのだ!という話


最初から張り切りすぎて、燃え尽きてしまう。




そんな経験を見たり聞いたりしたことはないだろうか。



世間では「五月病」という言葉もあるように、比較的よくみられる現象だと思う。



以前私の周りでも、「この人頑張りすぎているけど、大丈夫かな?」と思っていたら、案の定、数週間後に休職に入ってしまうことがあった。



このような現象は、専門的にはバーンアウトと表現される。






バーンアウトは、仕事に対する情熱が大きすぎた結果、精神的に疲弊してしまって起きるものだ。今まではそう思っていた。



しかし一方で、松岡修造やアニマル浜口のように情熱が大きくてもメンタルを崩さず、むしろ生き生きと働いている方々もたくさん存在する。



この違いは、一体何なのだろうか。



これがわかれば、バーンアウトの予防にも役立てることができ、得られる恩恵は大きいはず。



私はそう考え、文献検索してみることにした。






参考になったのは、2010年のケベック大学の研究である(Vallerand et al., 2010)。



こちらの研究では、97名の看護師と258名の看護師を対象に、情熱とバーンアウトの関係について2つの質問紙調査を実施している。



どんな調査を行ったかというと、情熱を次の2つに分けたのである。


・調和的情熱:仕事以外の生活ともバランスが取れているような情熱


・強迫的情熱:仕事なしでは生きていけないような情熱



つまりこの研究では、調和的情熱はワークライフバランスが保たれているので生き生きと働けるのに対し、強迫的情熱ではワークライフバランスが崩れてしまうのでバーンアウトにつながりやすいのではないかと考えたのである。






結果も正しくその通りで、



調和的情熱が大きいと、仕事の満足度が高く、ワークライフバランスの葛藤が少なく、
バーンアウトしにくかった


強迫的情熱が大きいと、ワークライフバランスの葛藤が多く、バーンアウトしやすかった



ということがわかった。



つまり、バーンアウトが起きるのは、情熱の量に問題があるわけではなく、情熱の質に問題があるということだ。



フォースも性質によってジェダイとシスに分かれるように、情熱もその性質によってバーンアウトを起こしにくくなったり、起こしやすくなったりするのである。



情熱の暗黒面にも飲み込まれないように気をつけていく必要がありそうだ。






それでは、調和的情熱と強迫的情熱がそれぞれどんなものであるかもう少し詳しくみていこう。



参考になるのは、2003年のケベック大学の研究である(Vallerand et al., 2003)。



先ほどもケベック大学の研究であったが、よくみると著者まで同じである。調べてみると、ケベック大学の心理学の教授であり、モチベーションや情熱の研究を専門分野としているようである。






さて、この研究では、調和的情熱と強迫的情熱を測る尺度が紹介されている。



それぞれ7つの質問項目に対し、1(全く当てはまらない)〜7(全く当てはまる)の7段階で回答する形式となっている。点数が高くなるほど、その情熱が高いというわけだ。



では、実際どのようなものなのかみていくことにしよう。






調和的情熱


・この活動では、様々な経験を積めている

・この活動での新発見に感謝している

・この活動では、忘れられない経験ができている

・この活動では、自分の特性が生かされている

・この活動は、自分の生活における他の活動と調和している

・私は、情熱を抑えることができる

・私はこの活動に魅力を感じている



強迫的情熱


この活動なしでは生きていけない

・衝動が強すぎて、この活動をやめられない

・この活動のない自分の人生を想像できない

・私は、この活動に感情的に依存している

・私は、この活動を控えるのが難しいときがある

・私は、この活動に強迫的感情を抱いている

・私の気分は、この活動をできるかどうかで決まる






確かに、この内容をみると、強迫的情熱では日常生活に支障を来たして、メンタルを崩しやすそうである。



特に、キャリア経験の少ない若い方々はこのような状態に陥りやすいと考えられるため、新入職員研修や一般職員研修の機会があれば、お伝えしていきたいところである。



読者の皆さんには、自分がそれぞれどの程度の情熱を持っているのか把握することで、セルフケアに役立ていただければ幸いである。