2020年6月8日月曜日

外出自粛の効果を知るには、アイオワとイリノイの境目に注目すべし


新しい生活様式が、始まった。



緊急事態宣言が解除され、営業を再開するお店が増えたことで、活動範囲も広がってきているのではないだろうか。






豊洲のららぽーとも3号館がオープンし、だいぶ賑わいを取り戻しつつある。



特に、RF1が出店してくれたことが嬉しい。



今まで豊洲には美味しいサラダを食べられるお店がなかったのだ。



これは、no salad, no lifeを体現する私にとっては死活問題である。ブロッコリーがこの世からなくなったことを想像するだけで恐ろしい。



豊洲へのサラダ専門店誘致を公約に掲げる政治家がいたら全力で応援していただろう。



住みやすい街と美味しいサラダはセットだと、私は思う。






そんなわけで、私もこれから外出頻度が増えていきそうなわけだが、ここで1つ疑問が残る。



それは、今までの外出自粛生活の効果はどのようなものだったのかということである。



あの巣ごもり生活はできることならもう二度と経験したくないが、自分の努力がどれだけ成果に結びついたのか気になるのが人間の性。



この辺りがわかると、今後第2波・第3波が来たときに再度外出自粛するかどうかといったことも検討しやすくなるだろうし、実際に外出自粛を要請される側にとっても、その正当性・妥当性を理解しやすくなるだろう。






ここで参考になるのが、2020年のアイオワ大学の研究である(Lyu & Wehby, 2020)。



この研究では、アメリカのアイオワ州とイリノイ州の州境に接している15の郡(アイオワ州8郡462,445名、イリノイ州7郡272,385名)を対象として、イリノイ州で外出自粛要請が出された後のCOVID-19感染者数の推移を州ごとに比較している。



アイオワ州では外出自粛要請が出されなかったのかというと、まさにその通りである。



全米で外出自粛要請が出されなかった州は5つあり、アイオワ州はその数少ない州の1つなのである。



つまり、地理的にほとんど変わりないアイオワ州とイリノイ州の州境の郡を調べれば、外出自粛要請の効果が見えてくるというわけだ。



やっていることはシンプルだが、発想は実に面白い。こういった創造力豊かな研究は私の好みである。



あと、どうでもいい話だが、豊洲は「豊州」ではないことに注意していただきたい。



私は引っ越して1週間くらい経つまで気づかなかった。






さて、この研究の結果はどうなっただろうか。



結論から言うと、やはり外出自粛要請を出したイリノイ州の郡の方がコロナの感染者数が少なかったのである。



具体的には、以下のようになる。



・イリノイ州の郡の方が外出自粛要請を出してから30日間で、1万人あたり4.71名少なかった


・これは、アイオワ州の郡の方が217名余分に多かったことを示し、アイオワ州の郡で発生した716名のコロナ感染のうち30.4%を占めた



つまり、イリノイ州の郡は外出自粛要請によって、1ヶ月間で30%程度コロナ感染を減らしたことが推測されるということになる。






これはかなり大きな数字だろう。



仮にこのデータを東京に当てはめてみよう。



緊急事態宣言が出された4月7日の感染者数の累計が1,217名、1ヶ月後の5月7日が4,894名である。



つまり、この期間に3,677名が新たに感染したわけだが、外出自粛していなかった場合はさらに30%増しの1,000名程度感染していたことになる。



自分たちの外出自粛でこれだけの感染を防ぐことができたと思うと、なかなか感慨深いものがある。



感染者数や死亡者数のように実態として目に見える指標に着目するだけでなく、このような目に見えない指標に思いを馳せると、また新しいものが見えてきて一興ではないだろうか。