有事の際になくなるものの代名詞といえば、トイレットペーパーだ。
オイルショック、東日本大震災、新型コロナと事あるたびに、姿を消してきた。
普段はドラッグストアに山積みされていても、ほとんど誰の目にも止まらないのに、有事のときはiPhoneの新モデルよろしく、あっという間に売り切れてしまうから不思議なものである。
それならそうと普段から備蓄しておけばいいのにと思われるが、多くの人々にとってそこまでの必要性を感じさせないのだろう。
必要と不必要の狭間を漂うもの、それがトイレットペーパーなのだ。
では、そんなトイレットペーパーを買い占めてしまうのはどんな人なのだろうか。
この特性がわかると、そのような人々向けにアレンジした対策もとりやすくなるだろう。トイレットペーパーの買い占めを緩和させることにつながるかもしれない。
文献検索を行ってみると、良いものが見つかった。
参考になるのは、2020年のザンクト・ガレン大学の研究である(Garbe et al., 2020)。
こちらの研究では、2020年3月に欧米22か国996名の被験者を対象として、パーソナリティ傾向とトイレットペーパーの備蓄状況の関連について調べている。
どうも、有事の際にトイレットペーパーがなくなるのは、日本だけではないようである。新型コロナ関連でこんな研究が出てくるとは夢にも思わなかった。
この研究でわかったのは、以下のようなことである。
・年齢が高くなるほど、トイレットペーパーを備蓄しやすくなる
・新型コロナへの恐怖が強いと、トイレットペーパーを備蓄しやすい
・この傾向は繊細な人ほど強くなる
・真面目な人もトイレットペーパーを備蓄しやすい
言われてみれば、確かにそうだろうなという結果である。
トイレットペーパーを備蓄する背景には、新型コロナへの恐怖があり、感染がより重症化しやすい高齢者やもともと心配症の人が買い占めにつながりやすいのだろう。
少し意外だったのが、真面目な人もトイレットペーパーを備蓄しやすいということである。
このような方々は、有事のときはトイレットペーパーが不足するから、将来に備えて問題解決志向的に買い占めにつながりやすいと考えられる。
つまり、トイレットペーパーを買い占めてしまうタイプは、大きく分けると恐怖優位型と問題解決型の2つがあるということだ。
ということは、買い占めを減らすためには、安心と解決策を提示していく必要となる。
台湾ではマスクを配給制にして対応していたが、今後日本でも不足する日用品に関してはそのような対策を行うことも選択肢の1つとして検討して良いのではないかと思う。
トイレットペーパーを買うために、人気ラーメン店のように行列に並ぶ状況は何としても避けたいところである。