2020年4月25日土曜日

ストレスはストレスでも休職につながりやすいストレスは何か


タイトルがなぞなぞっぽいが、別に謎かけしているわけではない。



試しに何かかかっているかと思って考えてみたが、何も思い浮かばなかった。



「じゃあ別のタイトルにしろよ」というところだが、そういうわけにもいかない。



今日はこのタイトルが直感的にしっくりきたのだ。



本文を書いてからタイトルを考えるという方々もいらっしゃると思うが、私はタイトルが決まらないとなかなか書き進められない。気分が乗らないのだ。



この記事も内容は既に思い浮かんでいたが、タイトルが決まらずに後回しになってしまった。






さて、精神科産業医の主な業務は何か。



それは復職支援を差し置いて他にない。



職場では目に見えて分かりやすい悩み事であり、産業医が活躍できる場がそこにはある。



したがって、私は復職支援に関連する情報に目が無い。



普段働くなかで、「休職につながりやすいストレスは如何なるものか」と気になっていたが、最近JAMAから参考になる論文が出版されたのでご紹介する(Duchaine et al., 2020)。






こちらは2020年のケベック大学の研究で、仕事のストレスとメンタル不調による休職の関連について調査した13件の先行研究(対象者130,056名)をメタ分析して、仕事のストレスが休職につながるリスク比を求めている。



ここでは6種類の仕事のストレスについてまとめられているが、休職のリスクが高い順に並べると、結果は以下の通りとなる。



1位 報酬の少なさ 1.76 (95%CI 1.49-2.08)


2位 努力報酬不均衡 1.66 (95%CI 1.37-2.00)


3位 仕事の負荷 1.47 (95%CI 1.24-1.74)


4位 裁量権のなさ 1.25 (95%CI 1.02-1.53)


5位 心理的ノルマ 1.23 (95%CI 1.04-1.45)


6位 サポートの少なさ 1.12 (95%CI 0.99-1.26)



どうやら報酬が少ないと感じていると、76%も休職のリスクが高まるようである。



1,2位ともに報酬関連のものとなっており、自分の仕事が報酬に見合わないストレスの影響力は大きいと考えられるだろう。



実際に、以前ご紹介した「メンタル不調に陥りやすい仕事のストレス」でも、努力報酬不均衡が第1位となっている。






では、この報酬関連のストレスに対して、どのようにアプローチしていけばよいか。



ここでいう「報酬」とは、単に金銭的なものだけでなく、周囲から認められたり、やりがいを感じたりすることなども含まれる。



職場からできることとしては、個人の成長につながるようなフィードバックの機会を増やしていくことだろう。



単に「ありがとう」や「君がいてくれて助かったよ」などの感謝の気持ちを伝えることも大事だが、人間は自分が成長していると感じたときにやりがいやモチベーションが出やすい。



具体的なフィードバックの方法としては、まずは「ここまではできるようになった(もしくはできている)」と評価している部分を示し、「次はここを頑張ろう」と課題を伝え、最後に「こういう風にやったらうまくいくと思うよ」と方向性を示していくのがよいだろう。



実際にこの方法で私は水戸協同病院の研修医時代にフィードバックされたのだが、毎日8-24時の長時間労働をしていても腐らずに仕事に取り組み続けることができた。長時間労働自体は改善していくべきだと思うが。






個人からのアプローチとしては、過度に「合理的」にならないように気をつけることである。



会社のなかで働いていれば、自分の思い通りにいかないことや理不尽なことにも当然出くわすだろう。



そんなときに最小限の努力で最大限の成果を出そうとレバレッジをきかせても、なかなかうまくはいかない。



そこで「どうしてうまくいかないんだ」と思い悩んでしまうと、休職まっしぐらである。



「そういうこともあるよね」「もしかしたら、この経験が将来役に立つかも」と情緒的に柔軟に捉えていく必要があるのだ。



仕事でうまくいかないと感じたときは、ぜひ情緒的な視点から物事を考えてみていただきたい。