2020年4月6日月曜日

新型コロナで絶賛拡大中のテレワークには、今後益々の発展を切に願う


東京に引越した。



今年度から産業医メインの働き方に変わったので、職場の近くに引越したのである。



しかも、家から職場まではdoor to doorで徒歩8分という好立地。



朝の早起きや満員電車のストレスも回避することができ、快適なライフスタイルが現実のものとなった。






しかし昨今、新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行している。



ワクチンや治療薬は現時点では存在せず、世間では手指衛生と3つの"密"回避が求められている。



職場に出勤してみると、私の仕事も感染拡大防止のためにテレワークに向けて調整しているとのことだった。



「これではせっかく職場から徒歩8分のところに引越したのに意味がない」という考えが一瞬脳裏を過ったが、「いや待てよ、徒歩8分という時間さえも削れるのであれば、より効率的ではないか」という有意味感で前向きに捉え直すことにした。



この手の考え方の切り替えは、御都合主義の私にとっては朝飯前だ。と言っても、私に朝飯を食べる習慣はない。






ただし、ここで素朴な疑問が湧いてくる。



「テレワークの効果って、そもそもどんなもんよ?」ということだ。



これについてはしっかり調べないといけない。



せっかく通勤時間が削れても作業効率が悪くなってしまっては元も子もないからだ。



そこで、2007年のペンシルベニア州立大学の論文を読んでみた(Gajenderan & Harrison, 2007)。






こちらの研究では、テレワークの効果について調査した46件の先行研究(労働者12,883名)をメタ分析している。



効果量としてはCohen's dが用いられており、目安としては0.2で「小さい」、0.5で「中くらい」、0.8で「大きい」効果があるということになる。



それでは、この研究でわかったテレワークの効果についてみていこう。



一覧にすると、以下のようになる。



・自覚的な裁量権 0.39


・仕事と家庭の両立の困難 -0.23


・上司との関係 0.23


・同僚との関係 0.00


・仕事の満足度 0.18


・主観的なパフォーマンス 0.02


・客観的なパフォーマンス 0.36


・転職の意向 -0.17


・仕事に伴う義務感 -0.23


・キャリアの見通し 0.01



まとめると、効果量はそれほど大きくないものの、仕事の満足度やパフォーマンスは上がり、仕事と家庭の両立もしやすくなり、転職の意向も減るという良いこと三昧な結果になっている。



裁量権が増えて、仕事を自由に進めやすくなるところが大きく関与しているように思える。






これだけみると「テレワーク万歳!」と讃称したいところだが、注意したいところが1つある。



それは、



・テレワークの頻度が多いと(週2.5日以上)、同僚との関係は悪くなりやすい(r = -0.19)



ということである。



あまりに職場にいる時間が短くなると、同僚との人間関係が希薄となってしまうようである。



上司との人間関係でこのような現象がみられないのは興味深いところだが。



同僚との人間関係が重要となる職場では、テレワークの頻度は増やしすぎないほうが賢明かもしれない。






ただ、全体的にみると、テレワークによるメリットはデメリットよりも大きいように感じる。特に、このご時世では。



普段から仕事以外は引きこもりという名のセルフロックダウンを実施している私にとってはさらに外出の頻度が減りそうだが、テレワークでより生産的に働けることを切に願っている。