2019年6月15日土曜日

創造力を高めるためには、まず何が必要なのかという話


先日、バカリズムライブに行ってきました。


バカリズムといえば、「お笑い四次元ポケット」とも評されるように、独自の世界観からシュールな笑いを生み出すことで有名であり、日本を代表するお笑い芸人の一人であることに間違いないでしょう。






ライブでは、今までの人生のなかでこんなに笑ったことはないだろうと思うくらい笑ってしまった。もしこれがライブ会場でなければ、間違いなく変質者として扱われ、警察のお世話になることは避けられなかったでしょう。



恐るべし、バカリズム。



そして、その創造力の豊かさが羨ましい。善良な市民を変質者へと変えてしまうほどの破壊力を伴った創造力。禁断の果実を食べて楽園を追放されてしまった人間の子孫であれば、少しでもその能力を身につけたいと思うことは当然でしょう。


そこで、創造力の高め方について調べてみました。



まず、創造力は鍛えられるのかという問題ですが、結論からいうと、鍛えられます。


しかも、若いうちだけでなく、大人になってからでも創造力は改善することがわかっています(Tsai, 2013)。


創造力のトレーニングに関する先行研究をまとめたメタ分析によると、効果量0.77となっており、ある程度大きな効果がみられています(Ma, 2008)。



特にそのなかで、創造力を鍛えるトレーニングとして効果があったのは、「態度」に関するものです。


創造力が高いということは人と違った独特の考えをもつということですが、そのような考えが生まれたとき、「こんなことを言ったら否定されるんじゃないか」と自制をかけてしまうことがあるのです。


グループでのブレインストーミングが生産的にならない要因としても、このように社会的な批判を恐れて自分の意見を控えてしまうことが大きいとされています(Mullen et al., 1991)。


これを防ぐために、「それぞれユニークな考えを持つことには大きな意味があり、社会や個人の役に立つ」というポジティブな態度を醸成することが、創造力を高めるうえで重要になるというわけです。


先行研究では、これが効果量1.46となっており、最も大きな効果がみられています。創造力を高めたければ、まず態度を改めよということのようです。




では、その他に創造力を高める方法としてはどのようなものがあるのでしょうか。


取り組みやすくて効果のあるものとしては、認知的なトレーニングがあります。つまり、物の考え方を工夫して創造力を高めるという方法です。


2017年のラドバウド大学の研究では、以下の4つが紹介されており、このトレーニングを1時間半やっただけでも創造力が有意に改善したことが報告されています(Ritter & Mostert, 2017)。


・一人で静かにブレインストーミング

・新しいアイディアが生まれやすい法則に着目

・無関係なものをつなげてみる

・SCAMPERに着目



それぞれ順番にみていきましょう。


まず、さきほども触れたように、集団でのブレインストーミングでは社会的な批判を恐れて創造力を十分に発揮することが難しいため、一人で静かにブレインストーミングを行うことが重要になります。


集団ではアイディアを磨くことはできても、新しいアイディアは出てきにくいのです。



次に、新しいアイディアが生まれやすい法則の例としては、現在の形状から別のものに変えてみることが挙げられています。


例えば、固体のものを液体、気体、粉末などに変えるといったものだ。実際の商品でいうと、板チョコを一口サイズのチョコにしたり、チョコレートドリンクにしたりといったことになります。


技術的なイノベーションを起こしたいときには、使いやすい手法のようです。



3つ目に、無関係なものをつなげる方法としては、


・適当に何かあるものを選ぶ

⇒それについてできるだけ多くのものを連想する

⇒その連想したものを解決したい問題と結び付けてみる


というものです。


例えば、新しい日焼け止めを開発したいという問題があり、適当に選んだものがボールペンだったとします。


ボールペンから、「書く、色、ローラー」というものを連想したとすると、日焼け止めと結び付けて、ボディペイントとしても使える日焼け止めやロールタイプの日焼け止めが案として出てきます。


突飛なものが出てくることも多そうですが、だからこそ新しいものを生み出したいときに役に立つようです。



最後は、SCAMPERです。これは、新しいアイディアを生み出したいときに考えるべきポイントの頭文字をとっています。


具体的には以下の通り。


S: Substitute (別のもので置き換えてみる)

C: Combine (組み合わせる)

A: Adapt (調整する)

M: Modify (修正する)

P: Purpose (別の目的で使ってみる)

E: Eliminate (余計なものを取り除く)

R: Reverse (方向を変える)、Rearrange (順番を変える)



いくつか例を考えてみると、付箋のポストイットは接着剤の失敗作から生まれたことで有名ですが、これは「Purpose」をうまく使っているでしょう。


iPhoneは電話に様々な機能を搭載したという点で「Combine」があり、ホームボタンとタッチパネルだけで操作できるようにした点で「Eliminate」も含んでいます。


バカリズムは、日常のシュールな出来事を笑いに変えるという点で「Substitute」や「Reverse」の要素をもっています。



いつの間にか、またバカリズムに戻ってしまいました。やっぱりバカリズムは素晴らしい。


また来年もライブを見に行きたい。



参考文献:
Ma, H. H. (2006). A synthetic analysis of the effectiveness of single components and packages in creativity training programs. Creativity Research Journal18(4), 435-446.
Mullen, B., Johnson, C., & Salas, E. (1991). Productivity loss in brainstorming groups: A meta-analytic integration. Basic and applied social psychology12(1), 3-23.
Ritter, S. M., & Mostert, N. (2017). Enhancement of creative thinking skills using a cognitive-based creativity training. Journal of Cognitive Enhancement1(3), 243-253.
Tsai, K. C. (2013). A review of the effectiveness of creative training on adult learners. Journal of Social Science Studies1(1), 17.