医師も将来はAIに取って代わる時代が来るのだろうか。
以前に「AIで復職判定できるか」という記事を書いたが、最近のAI技術の進歩を見ていると、そんな予感が自然と湧いてくる。
特に画像解析の分野ではAIの強みが発揮されそうに思うが、実際のところはどうなっているのだろうか。
このことに関して参考になるのは、2020年のIBMの研究である(Wu et al., 2020)。
こちらの研究では、3年目の放射線科レジデント5名と342,126枚の胸部レントゲン写真を学習させたAIを対象となっている。
内容としては、放射線科のエキスパートによって72所見あることがわかっている1,998枚の胸部レントゲンを読影し、どちらがより正しく読影できたのか調べている。
果たして、レジデントとAIのどちらが優秀だったのだろうか。
結果は以下のようになった。
・感度(所見ありを陽性と判断できる確率)に関しては、レジデントとAIに有意な差はみられなかった(0.720 vs 0.716)
・しかし、特異度(所見なしを陰性と判断できる確率)や陽性的中率(陽性と判断したなかで実際に所見がある確率)に関しては、レジデントよりAIのほうが有意に優れていた(特異度:0.973 vs 0.980, 陽性的中率:0.682 vs 0.730)
どうやら、総合的にはレジデントよりもAIのほうがより正しく読影できたということになる。
やはり画像解析では、AIの力は強いようである。
この結果を見ると、読影はAIが行う時代が近々訪れるかもしれない。
特に、これがIBMの研究であることを考えると、読影AIの製品化がより現実味を帯びてくる。
今後AI技術が発展していくと、医師の仕事も機械的なものはAIに取って代わっていくことは避けられないかもしれない。
精神科産業医の端くれとして生き残っていくために、面談スキルやケース対応力など人間的な部分を今後もより高めていきたいところである。