日常生活のストレスで仕事に影響が出る。
このことは直感的にもわかりやすいだろう。
プライベートがうまくいかないときは仕事もうまくいかないものである。
では、仕事のどのような部分に影響が出るのだろうか?
私も最近までこのことを意識してこなかったが、参考になる論文を見つけたのでご紹介する(Amsted et al., 2011)。
それは、2011年のベルン大学の論文である。
家庭のストレスが仕事に与える影響についてメタ分析を実施し、仕事のどの部分に影響が出やすいのか調べてくれているのだ。
これは有難い。どのくらい有難いかというと、ちょうど自分が電車に乗ったときに隅っこの席が空いたくらいの有り難さだ。
それではさっそく結果をみていこう。
家庭のストレスで仕事に影響が出やすいのは以下のような項目である。
・組織市民行動が減る(r = -0.54)
・仕事のストレスが増える(r = -0.28)
・バーンアウトが起きやすい(r = 0.27)
・仕事のパフォーマンスが悪くなる(r = -0.20)
・転職の意向が高まる(r = 0.17)
家庭でのストレスが大きくなると、仕事どころではなくなってしまい、仕事のパフォーマンスが低下したり、転職の意向が高まったりするのだろう。
それによって、仕事でもうまくいかなくなり、仕事自体のストレスが増えたり、バーンアウトが生じやすくなることが考えられる。
組織市民行動とは、自分の中核業務以外で組織を助ける行動のことをいう。
例えば、同僚を助けたり、ミーティングの場で雰囲気を和ますような発言をしたりすることが組織市民行動である。
このような組織市民行動が多いと、職場の雰囲気が自然と良くなり、ストレス緩和要因が高まるため、仕事のストレスに対処しやすくなる。
したがって、組織市民行動は健康的に働くために必要不可欠なものなのだ。
そう考えてみると、家庭のストレスが仕事に与える影響はなかなか恐ろしいものである。
自分の身の周りで急に組織市民行動が減った方がいらっしゃったら、もしかしたら家庭のほうに何か問題があったのではないかという可能性も推測される。
日常生活ではストレス解消できる時間も確保しながら過ごしていきたいものである。
ご興味のある方は、前回の休暇の過ごし方やストレス対策の記事をぜひ参考に。