以前に、休暇による仕事のパフォーマンス改善効果は長続きしないということを紹介した。
実は、幸福感に関しても同じようなことが言えて、2008年にラドバウド大学が行ったメタ分析では、仕事を再開してから2-4週間で休暇による幸福感は消失することが報告されている(Bloom et al., 2008)。
待ちに待った休暇が終わると、あっという間に元に戻ってしまうのは切ない。
リア充ではない非リア充の私でもそう思うのだから、きっと読者の方々もそう思っているだろう。
休暇中の過ごし方を工夫することで、何とか幸福感を持続させる方法はないだろうか。
「どうせないだろうなぁ。そんな研究するくらいならもっと別の研究するだろうしなぁ。」と思ってダメ元で文献検索してみると、すぐに見つかった。
しかも、著者は先ほどのメタ分析と同じラドバウド大学の研究者だった。全くの見ず知らずの他人だが、勝手に親近感と尊敬の念が湧いてきた。
どんな論文だったかというと、54名の労働者を対象として、休暇前・休暇中・休暇後の幸福感、休暇中の活動内容を調査し、休暇後の幸福感に影響を与える活動について解析している(Bloom et al., 2013)。
その結果、休暇4週間後の幸福感と関連のある休暇中の活動が明らかになったのだ。ぜひとも知りたい。
ではまず、休暇4週間後の幸福感と関連のなかった項目について紹介する。意外な項目も含まれているため、注意していただきたい。
・運動
・社会的活動
・仕事から離れたこと
・睡眠の量と質
どれも健康と関連のありそうな項目だが、休暇4週間後の幸福感とは有意な関連はみられなかった。
社会的活動と睡眠に関しては、休暇中の幸福感とは関連したが、長続きはしなかったという結果になった。
考えられる理由の1つとしては、このような活動はある程度長く続けないと長期的な効果は期待できないということや、休暇中にこのような活動に力を入れる方々はもう既に日常生活の習慣として取り入れていて効果がマスクされているということが考えられる。
1つと言っておきながら、2つ挙げてしまった。
では、休暇4週間後の幸福感と有意に関連のあった活動はどのようなものだったかというと、
・休暇を長く取得したこと
・受動的な活動
・リラクゼーション
・休暇のコントロール感
となった。
休暇による幸福感を長続きさせたいときは、休暇も長く取ったほうがいいようだ。
実務面では、疲れがたまったときは月曜や金曜などに有休を取って3連休にすることをアドバイスすることもあるが、それはどうやら科学的にも正しいそうだ。
受動的な活動とは、映画を観たり、温泉に入ったり、マッサージを受けたりするなどの活動を指すだろう。受動的な活動でリラックスできることが幸福感の持続にも関わっているようだ。
休暇のコントロール感とは、休暇中の過ごし方をどれだけ自分で決められるかということになる。
面談で話を聞いていると、家族や地域のイベントがあって休日もなかなか休めないという方々がいらっしゃるが、そういう方々は休暇の幸福感が長続きしないということだろう。
まとめると、休暇中はなるべく自分の好きなように計画を立てて、受動的な活動でリラックスできると幸福感が長続きしやすいということになる。
私もそろそろ旅行に行くので、お風呂に入ってゆっくり過ごしたい。