ネットフリックスで配信されている「13の理由」というドラマをご存知だろうか。
実は、私も詳しく知らない。シーズン3まで製作されているようだが、1シーズンどころか1話も見ていない。
ただ、予告編を見ると面白そうだ。いつか見てみたい。とはいっても、大抵の予告編は面白くできているのだが。でなければ、意味がない。
予告編を見ると、どうやら高校生の自殺の真相に迫るドラマのようだ。
では、どうしてこのドラマに興味をもったかというと、きっかけはJAMAだ。
2019年7月24日に掲載された記事で、このドラマの自殺シーンがカットされたということが紹介されていたのである(Voelker, 2019)。
私は、そのとき思った。これはウェルテル効果に違いないと。
ウェルテル効果とは、自殺関連の報道に影響されることによって、実際に自殺者数が増えてしまう現象のことをいう。
古くはゲーテが執筆した「若きウェルテルの悩み」という小説から始まり、主人公ウェルテルが親友の婚約者に恋して思い悩んだ末に自殺してしまうストーリーの影響を受けて、当時のヨーロッパで自殺者数が増えたことから、ウェルテル効果と呼ばれるようになった。
当時の「若きウェルテルの悩み」の影響は非常に大きかったようで、出版禁止とした国もあったようである。恐るべしウェルテル。
ちなみに、このブログの独特な文体から繰り広げられるメンタルヘルスの世界に魅了されてしまい、「更新はまだかまだか」と悶々としながら夜な夜なブログをチェックしてしまう状態に陥ることを大滝効果という。もちろん、嘘である。
ちなみにちなみに、本屋に足を運んだときに便意を催すことを青木まりこ現象というらしい。これは本当。
さて、JAMAの記事に話を戻すと、やはりウェルテル効果の可能性を否定できないとのことで、「13の理由」の自殺シーンがカットされたと報告されている。
では、実際にこの件に関して調査した論文があるはず。そう思って調べてみると、やはりあった!
2019年5月29日にJAMAからオンライン出版されたウィーン医科大学の研究で、アメリカの性別年代別の自殺者数の推移について調査している(Niederkrotenthaler et al., 2019)。
この研究によると、「13の理由」がソーシャルメディアで注目された2017年4-6月の期間では、
・10代の男女の自殺が著しく増加
・男性では12.4%、女性では21.7%の自殺増加が認められた
となった。
「13の理由」は女子高校生の自殺を扱っているため、10代の自殺が増え、特に女性で顕著だったというのは理にかなっている。
やはりウェルテル効果の可能性は否定できない。メディアの媒体が時代とともに、本→新聞→テレビ→インターネットと移り変わっても、ウェルテル効果は存在し続けるようだ。
そんな中でも、今回の研究のように、疑わしいことを検証して、社会にメッセージを発信する論文は素敵だと思う。これは惚れる。
私もいつか、こんな論文を書いてみたい。