2019年10月30日水曜日

ハラスメント対策にも有効性を発揮したあの手法は、ホモサピエンスの誇るべき習慣として採用したほうがいいと思う


このブログで今年最も読まれている記事をご存知だろうか。



おそらくご存知ないだろう。なぜなら、私も知らなかったからだ。



知人の論文を紹介した記事はSNSでシェアされやすいこともあってアクセス数が伸びるため、そのどれかだろうと思っていたが、調べてみると実はそのどれでもなかった。



そう、それこそ今回ご紹介する筆記開示だ。






筆記開示とは、日常生活の出来事について思ったことや感じたことをありのままに書いていくことである。



これを行うとメンタルの改善効果があることが先行研究で示されているのだが、詳しい内容に関しては過去の記事を参照していただきたい。



この記事は昨年書いたものにも関わらず、ジワジワとアクセス数を伸ばし、ひっそりと頭角を現してきた。きっと誰かがどこかで紹介してくれているのだと思うが、最近まで全く気づかなかった。まさにダークホースである。






今回は、その筆記開示がハラスメント対策にも役立つことがわかったのでご紹介することにする。



参考になったのは、2011年のオーストラリアのニューイングランド大学の研究とその研究に関するコクランのレビュー論文である(Kirk et al., 2011; Gillen et al., 2017)。



これらの研究では、46名の被験者を筆記開示群(22名)とコントロール群(24名)に分けて、その後のハラスメントへの影響について調査している。



筆記開示群では仕事の出来事に関する考えや感情を1日20分3日間書くように、コントロール群では仕事以外の出来事について書くように指示された。






その結果、



・ハラスメント加害は有意に減少(MD: -3.52, 95%CI -6.24 to -0.80)


・ハラスメント被害には全体として有意な変化はみられなかった(MD: -3.30, 95%CI -6.89 to 0.29)


・しかし、もともとのハラスメント被害が小~中程度だった場合には有意な改善がみられた(MD: -5.74, 95%CI -9.88 to -1.60; MD: -3.44, 95%CI -6.51 to -0.37)



ということがわかった。



つまり、筆記開示を行うと、ハラスメント加害は有意に減少し、もともとのハラスメント被害が中程度以下だった場合も有意に改善するということになる。



ハラスメント被害全体で有意な改善がみられなかったのは残念だが、なかなかの効果がみられている。筆記開示は大したコストや手間がかかるものでもないので、やってみる価値はあるだろう。






実は、かく言う私も実践している。



筆記開示を行うと、頭のなかで何度も同じことをくよくよ考えることが減るように感じる。おそらく、言葉として目に見える形で表現したことで、自分をより客観視できるようになったからだと思う。



また、すぐに効果を実感するのは難しいかもしれないが、毎日続けていくと確実に自分の表現力が上がっていくのがわかる。



1年前に書いていた文章と比較してみると、日常の出来事をより細かく言語化できるようになっている。言語化できるようになると、物事をより適切に理解できるので、ストレス対処にも役立っているのだろう。継続は力なりということだ。



メンタルの安定を図りたい方は、ぜひ試してみることをオススメして、結びの言葉とさせていただきたい。